解りにくい MKSA 単位系となった経緯

始めに

MSKA 単位系は捻くれた単位系です。MKSA 単位系は Maxwell 方程式を理解したあとに、やっと正しく理解できる単位系です。MKSA 単位系は、電磁気学を学ぶためには不適切な単位系です。

二つの 1`coulomb の電荷を 1 `meter 離したとき、電荷の間に働く力:Force は

    q@=1, r@=1, Force = 1/(4`π `ε0) qˆ2/rˆ2 # -------- (式 1)
    < 8.98755e+009 >

    Force/`oku  # `oku== 10ˆ8 すなわち億の単位です
    < 89.8755 >

問題提議

MKSA 単位系が捻くれていることは、次のような問題提起をしてみることで分かると思います。

これらの問題提議に答えられないことは、MKSA 単位系の理解に抜けがあることを意味します。

MKSA 端子系の解りにくさは ε0/μ0 といった volt, weber といった電磁気の単位次元を含んだ定数を導入することにあります。単位系について循環論法になっています。Maxwell 方程式から 4 π を消してしまうことも、方程式を変形していくときに幾何学的な直感を働き難くしてくれます。

MSKA 単位系が、このような捻くれた単位系になってしまったのは歴史的な経緯のためです。ε0/μ0 といった 複雑な単位次元を含んだ定数を導入するためです。電磁気学において体系的に基本単位から誘導単位を導いてある教科書はないと思います。どうしても循環論法や前方参照が入った説明になってしまいます。以下、ε0/μ0 を導入した理由を説明する事で、循環論法ではない MKSA 単位系の説明を行います。

Gauss 単位系と MKSA 単位系 emu 単位系

Guuss 単位系が実務で使われない理由を説明するため、また単位系の歴史的な経緯の説明のため、Gauss 単位系と MKSA 単位系 emu 単位系の三つを見てみましょう。

Gauss 単位系

Gauss 単位系は電磁理論を論ずるのに理想的な単位系です。

div E = 4π ρ 
div B = 0
rot E = -1 1/c ∂B/∂t
rot H = 4π j + 1/c ∂E/∂t

dF = 1/c I dl x B

D =  E + 4π P
B =  H + 4π M
-------------------------------------------- (Gauss 単位系 Maxwell 方程式)

綺麗な Gauss 単位系

Gauss 単位系は綺麗です。点電荷を/点磁荷を基準に、電場・磁場の方程式が対称に作られています。

電磁気をイメージするときに幾何学的な直観が働き易い単位系です。真空中での電磁場の挙動を考えるときは最適です。

Guass 単位系で 4π が出てくるのは物質に関連した個所です。空間に散らばっている電場/磁場については 4π は入ってきません。私には球の表面に広がっていた電場や磁場が、何らかの理由で物質内の一点に集中したために 4π が現れているように思えます。Gauss Maxwell 方程式に出てくる 4π は自然の三次元構造の反映であり Gauss 単位系の優れた所です。

Gauss 単位系では電場:E と分極率:D が同じ単位次元です。磁場:H と磁束密度:B も同じ単位次元です。MKSA 単位系のように、異なる単位次元を割り振って学習者を惑わせることをしません

oersted/gauss

Gauss 単位系では、磁石などの物質が作る磁束密度の強さを gauss の単位で表現します。電流が作る磁場の強さを oersted の単位で表現します。でも物質が作る磁束密度も微視的に見れば電子スピンが作る円電流が作る磁場です。本質的には同じ物です。互いに加減算可能な物理量です。真空中では同じ値となります。

歴史的な経緯として、磁気に関する Gauss 単位系のgauss/oersted 単位は未だ使われています。でも本当は gauss/oersted は、後で説明する emu 単位系での単位です。

Gauss 単位系の問題点

現実には Gauss 単位系は存在しません。電圧を Gauss 単位系で表現しようと思ったら「Gauss 単位系での単位電圧の x 倍」のような表現をしなければなりません。

本気で Guass 単位系を作ろうとしたら、電場系の単位と、磁場系の単位の両方が混在する形になってしまうことが「Gauss 単位系 Maxwell 方程式」からも予測されます。

ここで最初の問題定義「なぜ Guass 単位系を選択しなかったのでしょうか?」についての私の考える答え「Gauss 単位系は emu 単位系を超えられなかった。」を書いておきます。電流と電圧を基本とする emu 単位系が実用的だったのです。電場系と磁場系の二系統の単位が入り込んでくる単位系を新たに導入する意味はありません。

なお Gauss 単位系では現実の設計ができません。基本的な電流、電圧、抵抗の呼び名さえ Gauss 単位系にはありません。コンデンサやコイルなどの素子の値も Gauss 単位系では表現できません。現実の設計で必要な計算処理ができません。純粋理論など限られた個所でしか使えない単位系です。

有理化単位系

Gauss 単位系の Maxwell 方程式で、物質の項に 4π が常に出てくるのならば、物質側の物理量に最初から 4π を入れておけば良いとも考えられます。物質に閉じ込められていた量が三次元空間に飛び出すときに 1/(4π) の項が出てきますが、こちらの考え方もありです。これが有理化された単位系と言われ Heaviside/Lorentz により提唱され、MKSA 単位系でも取り入れられました。

MKSA 単位系

MKSA 単位系は、後で説明する emu 単位系の多くを取り込んだ単位系です。emu 単位系に妥協して出来上がった単位系とも言えます。次の Maxwell 方程式となります。ε0 μ0 の単位次元が複雑に入り込んだ定数を導入して、Maxwell 方程式の対称性を保ちます。

div E = ρ/ε0 
div B = 0
rot E = -∂B/∂t
rot H = j + ∂D/∂t

(rot B = rot μ0 H = μ0 j + μ0 ε0 ∂E/∂t) = μ0 (j + ∂D/∂t)

dF = 1/c I dl x B

D = ε0 E + P
B = μ0 H + M

#μ0, ε0 の物理単位
μ0 ≡ 4`π 1e-7 weber/(ampere meter)
   == 4`π 1e-7 `Kg `meter `sec^-2 `ampere^-2
ε0 ≡ 1/(c^2 4π 10^-7) coulomb/(volt meter)
   == 1/(c^2 4π 10^-7) `meter^-3 `Kg^-1 `sec^4 ~ampere^2,
-------------------------------------------- (MKSA 単位系 Maxwell 方程式)

MKSA 単位系は meter Kg sec を使って次に定義する ampere 単位を追加した単位系です。

間隔を 1 meter に保ち,無限に長い平行線の 1 meter 当りに作用する力が
2 e-7 newton のときの電流が 1 ampere である。 ---------  MKSA での電流の定義

でも、この電流の定義だけからは「MKSA 単位系 Maxwell 方程式」は導けません。ε0 や μ0 は導けません。かなり捻った考えが入り込んでいます。

にも拘わらず、この捻られた論理の説明が殆どなされていません。たぶん、次に述べる emu 単位系から辿る歴史的な経緯の説明が面倒なためなのだと思います。

emu 単位系

emu 単位系は Ampere が提唱した、電流を基本に作られた単位系です。1863 年に Maxwell が中心になって BAU(British Assosiation Unit)単位系として纏め上げられました。absolute 単位系と呼ばれることもあります。次の Maxwell 方程式になります。

div E = cˆ2 4π ρ
div B = 0
rot E = -1 ∂B/∂t
rot H = 4π j + 1/cˆ2 ∂E/∂t

dF = I dl x B

D = 1/cˆ2 E + 4π P
B =       H + 4π M
-------------------------------------------- (emu 単位系 Maxwell 方程式)

この emu 単位系での電圧/電流の基本単位は、日常的に使われる単位とは桁数が違いすぎていました。ampere, volt はこの桁数の別名として使われていました。emu 単位電流の 10ˆ-1 が ampere であり、emu 単位電圧の 10ˆ8 が volt でした。この ampere や volt 目盛りを使った電流計/電圧計が広く使われました。この経緯が英文ですが、ここに書かれています。

最初は桁数の意味だった ampere や volt は、そのうちに単位のようにも受け取られるようになったと推測されます。始めは Ampere の法則によって電流の理論的基準を与え、それを元に導かれる電圧は、実際には 1`volt 前後の電池を基準に計っていました。電流は特定の断面積サイズ・長さの電線を基準として基準抵抗を定め、電流計を校正していました。電圧計や電流系が volt や ampere で目盛られていれば、volt や ampere を電圧や電流の単位の意味にも解釈されるようにもなるでしょう。その ampere と volt からの誘導単位である ohm, farad, henry などの回路素子の単位も使われるようになりました。

現在 実務で使われている多くの電気系の単位が emu 単位系のときのままに MKSA 単位系でも引き続いて使われています。逆に MKSA 単位系を作るとき、既に emu 単位系での多くの単位が実用的に使われていたので、emu 単位系との折衷案単位系を選択せざるを得なかったわけです。

電流定義に 1e-7 の係数が入る理由

1960 年に MKSA 単位系を SI 単位系として定める時には既に amper/volt が使われていました。それらを基準とする ohm/farad/henry なども既に広く使われていました。MKSA 単位系を定めるとき、既存の単位系を使い続けられるようしました。同時に、ampere, volt を桁数の意味から物理単位の意味に変更しました。emu 単位系を取り込んだために電流単位の提議に 1e-7 の係数が入り込みました。

MKSA での電流定義を emu 単位系の視点から見てみます。 emu 単位系で、 r だけ離れた並行する二本の電線に電流 I を流したときの単位長さあたりに発生する力は、emu 単位系 Maxwell 方程式から次のようになります。

F `dyne/cm == 2 I^2/r

これより、emu での単位電流の定義は 「間隔を 1`cm に保ち,無限に長い平行線の 1`cm 当りに作用する力が 2 dyne のときの電流が emu における単位電流である。」となります。さらに emu 単位系では`ampere は 10^-1 の意味でした。ですから、同じ大きさの電流が電線に働く力を meter Kg sec で表すと

2 dyne * 10^-1 * 10^-1 == 2 * 10^-5 newton * 10^-1 * 10^-1 == 2 * 10^-7 newton

このように、emu 単位系の ampere と同じにするため、ampere 来の電流単位を使いつづけるために MKSA の電流定義には 2e-7 newton のマジック・ナンバーが入りこむ事になりました。

一方 MKSA 単位系で、 r だけ離れた並行する二本の電線に電流 I を流したときの単位長さあたりに発生する力は、MKSA 単位系 Maxwell 方程式から次のようになります。

F newton/meter == 2 μ0 I^2/(4π r)

この μ0 と単位電流の定義から μ0 = 4`π 1e-7 となります。4`π は、MKSA 単位系の策定者たちが有理化単位系を選択したことから入り込みました。

でも、電流定義だけからは μ0 の単位次元が導けません。 weber の単位を導出できません。これらは次に説明するように ε0 から逆算する形で定まりました。

MKSA 単位系での電圧定義と ε0 μ0 の単位次元

電圧 volt についても emu 単位系と MKSA 単位で同じにする必要がありました。その条件を満たすように ε0 が定められました。

emu 単位系では ampere は 1/10, volt は 10ˆ8 の意味でした。ですから emu 単位系での単位電流は 10`ampere です。単位電荷は 10 `coulomb です。この電荷から 1cm 離れた位置には、emu Maxwell 方程式から導かれるように cˆ2 1e-8`volt の電位が発生しています。

cˆ2 emu単位電圧 == cˆ2 1e-8`volt == (1単位電荷:10`ampere `sec)ˆ2 / (1 `cm)ˆ2

これを meter Kg sec と MKSA 単位系の ε0 を含んだ関係式で表すと次の式になります。

(c `meter/`cm)ˆ2  1e-8`volt == c ˆ2  1e-4`volt == 
 == 1/(4 `π `ε0) 10`ampere `sec / 0.01`meter
 == 1/(4 `π `ε0) 1e1 / 1e-2
 == 1/(4 `π `ε0) 1e3
これより ε0 は下の値を持つことになります。
1 volt = 1/(`cˆ2 4`π ε0) 1`ampre `sec/1`meter
ε0 = 1/(`cˆ2 4 `π 1e-7)

上の式を物理的に満たすために、MKSA 単位系の策定者たちは ε0 を 1/c の単位次元の単純な比例係数ではなく、次の単位次元を持った数値にしました。

ε0 = 1/(`cˆ2 4 `π 1e-7) `ampere `sec/(`volt `meter)
   = 1/(`cˆ2 4 `π 1e-7) `coulomb/(`volt `meter) 
有理化単位の選択

ε0 の値によって、電荷 q の作る電位 φ(r) の式は

ε0 = 1/(`cˆ2 4 `π 1e-7) `coulomb/(`volt `meter) , φ(r) = 1/(4`π ε0) q/r
ε0' = 1/(`cˆ2 1e-7) `coulomb/(`volt `meter) ,     φ(r) = 1/ε0' q/r
のどちらかを選択できます。MKSA 単位系の策定者たちは 4`π が付くほう/有理化単位系を選択しました。
以上のような経緯で ε0 の値と単位次元が決まりました。

μ0 と磁荷の単位 weber の導入

ε0 が上の単位次元を持つ数値ならば ε0 μ0 = 1/cˆ2 より、μ0 の単位次元も次のように定まります。

μ0 = 1/cˆ2 1/ε0
   == 4 `π 1e-7 (`meter/`sec)ˆ-2`volt `meter/(`ampere `sec)
   == 4 `π 1e-7 `volt `sec/(`ampere `meter)

でも透磁率が `volt `sec/(`ampere `meter) は変です。そこで、もう一捻りされます。電場 E と電束密度 D 、電荷密度 q 、電荷の間に働く力 F

D = ε0 E
div D = q
F = 1/(4π ε0) q q'/r^2

同様な意味でμ0 のは磁場 ampere turn を生成する磁荷面密度(磁束密度)との換算係数とも見なせます。もし単独磁荷が存在して磁荷密度 qm があるならば次の式が成り立ちます。

B = μ0 H
div B = qm
F = 1/(4π μ0) qm qm'/r^2

ですから coulom ≡ ampere secμ0 に対応させるように weber ≡ volt sec を導入してやれば μ0 の単位次元は weber/(ampere meter) とできます。この weber の単位を磁荷の単位と見なすことができます。

このような経緯で μ0 は次の値と単位次元を持つとされました。

μ0 = 4 `π 1e-7 `weber/(`ampere `meter)

weber の誘導単位は、このように ampere と volt で Maxwell 方程式を記述するための辻褄合せの結果として導入された物理量です。「1 単位の weber とは ..... する磁束密度です」のよう定義される物理量ではありません。

このように磁荷の単位 weber は全く新規に導入された単位でした。、ampere/volt のように emu 単位系のときのままに引き継いだ他陰ではありません。結果として weber は使われることが少ない物理量になっています。磁石関連分野では今でも emu の gauss 単位が多く使われています。近頃は weber も使われる機会が増えてきたようですが、なかなか浸透しなかったのも理解できます。

ここまで述べてきたように

電流定義 ==> emu での volt から ε0 の値と単位次元の決定 ==> μ0 の値単位次元の決定
と辿って μ0 を決定した後でやっと、MKSA 単位系での平行直線電流に加わる次の力の計算式が単位次元まで含めて説明できます。次の単位電流の定義式を理論的に合理化できます。
F = μ0 I1 I2/(2`π r)
本当に捻くれた定義のしかたです。単位系です。

誘導単位

単なる偶然ですが、emu の 1`ampere * 1`volt == 1`joule/`sec == 1`newton `meter/`sec の関係がありました。本来ならば cgs 系の基本単位を組み合わせたら `dyne cm/sec になるはずであり、MKS 系の newton meter/sec にはなりません。でも桁数調整としての ampere と volt を使っていたため、MKS 系の単位時間の仕事 `newton `meter/sec == `joule/`sec になっていました。

このことから MKSA の電圧 volt を エネルギー/(時間 電流) の誘導単位と見なすことも可能かもしれません。でも、これでは順序が逆です。先に述べた歴史的経緯からも分かるように、ampere と volt は互いに独立したアプリオリに与えられた単位だと考えるべきです。ampere と volt からエネルギーが導かれる関係で捉えるべきです。

回路設計では下のような単位を頻繁に使います。
名称 単位名称 単位記号 volt ampere 単位次元:推奨 m Kg s A 単位次元:非推奨
電荷 クーロン `ampere `sec s A
電気抵抗 オーム Ω `volt/`ampere m Kg s^-3 A^-2
電気容量 ファラド `ampere `sec/`volt m^-2 Kg^-1 s^4 A^2
コンダクタンス ジーメンス `ampere/`volt m^-2 Kg^-1 s^3 A^2
インダクタンス ヘンリー `volt `sec/`ampere  m^2 Kg s^-2 A^-2
磁束 ウエーバー Wb `weber==`volt `sec m^2 Kg s^-2 A^-1
磁束密度 テスラ `weber/`meter^2 Kg^2 s^-2 A^-1

ε0 と μ0 を M K S A の四つで下のような単位次元とする教科書も多くあります。

ε0 ≡ 1/(c^2 4π 10^-7) m^-3 kg^-1 s^4 A^2,
μ0 ≡ 4π 10^-7 m kg s^-2 A^-2
ε0 = 1/(`cˆ2 4 `π 1e-7) `coulomb/(`volt `meter) 
μ0 = 4 `π 1e-7 `weber/(`ampere `meter)

元々 MKSA 単位系では ε0 μ0 の単位次元はアプリオリに与えられるものです。(このことが MKSA 単位系を解り難くしています。)。ε0 μ0 の単位次元をアプリオリに与えることと、volt の単位次元を基本量としてアプリオリに導入することは 等価です。電磁現象は MKS に ampere と volt の二つを基本量として追加した単位系で捉えるべきです。

MKSA 単位系は MKSA volt 単位系と捉えるべき

電磁気の単位系は M K S 以外に二つの基本単位を必要とするように思えます。(強い異論がでるでしょうが)

ガウス単位系は、電荷 q と磁荷 qm を基本とする単位系でした。emu 単位系は電流を基本とする単位系として作られましたが、電圧も電流とは独立した基本量として捉えられていました。そして div E = cˆ2 4π ρ として関係づけられます。このように emu 単位系は電流と電圧を基本量とする単位系でした。結果として Maxwell 方程式が対称ではなくなりました。

MKSA 単位系も ampere と volt を基本とする単位系として、ems 単位系を整理し直して作られました。 でも Maxwell 方程式の非対称正を ε0/μ0 の値と単位次元に隠してしまいました。そのため捻くれた分かり難い単位系となりました。

電磁単位系に二つの基本単位を導入することは、単位系の冗長性に繋がります。同じ物理量に異なる単位次元与えることになります。MKSA 単位系では「電場と電束」「磁場と磁束」が、この関係にあります。現実に本質的には同じ物理量でありながら、MKSA 単位系ではこれらには異なった単位次元が割り当てられます。(Gauss 単位系では「電場と電束」「磁場と磁束」は同じ単位次元です。)物質量に電束と磁束を割り当てる事で辻褄を合わせています。

でも時間微分が入ってくると下のように電束/磁束が入り込んできます。「電束/磁束は物質量である」では済まませられません。これは辻褄を合わせきれなかったのだと思っています。

rot E = -∂B/∂t
rot H = j + ∂D/∂t

もし MKSA 単位系とは別に、綺麗な電磁単位系を新規に作るとするならば、相対論的な (φ, A):(電位,ベクトル・ポテンシャル) を基本とする単位系になるだろうと思います。そのときでも、時間に対応する基本単位:volt と空間に対応する基本単位 weber/meter の二つが M K S 以外に入り込んでくると思います。

このように自然が電磁気の記述のために M K S 以外に二つの基本量を要求することからも、MKSA 単位系は MKSA volt 単位系と捉えるべきだと主張します。たんに歴史的な経緯だけではありません、

単位の換算

単位系を emu 単位系と MKSA 単位系の関係を理解するには、それらの単位の換算計算をしてみることが有効です。sf を使えば単位付き計算がエディタ上でできます。単位換算定数の設定に煩わされることなく、数式の関係に集中しながら確認計算ができます。

emu / MKSA 単位系での電荷の換算

emu と MKSA 単位系での電荷の換算係数を求めます。emu での単位電流の 1/10 が MKSA での 1`ampere であることを確認します。

CGS-emu 単位系での Maxwell 方程式は

div E = cˆ2 4π ρ 
div B = 0
rot E = -1 ∂B/∂t
rot H = 4π j + 1/cˆ2 ∂E/∂t

dF = I dl x B

D = 1/cˆ2 E + 4π P
B =       H + 4π M