単位系や物理法則の方程式は身に付けるものです。物理概念として理解・体得されるものです。暗記するものではありません。 でも SI 単位系のうち電磁単位系は理解・体得が困難な単位系です。(以下 SI 単位系の電磁量の部分に限定する意味で MKSA 単位系の言葉を使います) にもかかわらず、MKSA 単位系について体系的に説明されることは殆どありません。この文章は今までなされてこなかった説明に挑戦するものです。
単位系は、理論体系を理解する過程、すなわち自分の頭の中に理論体系を構築していく過程で、物理量の概念や法則の式と一緒に理論体系の基本要素とし理解・体得されてしまうものです。物理法則を理解したならば、その中で扱われる物理量の概念を理解せねばなりません。そして物理量概念と その単位はセットで理解されるものだからです。理論体系を理解した後ならば、基本体系から組み立て単位系の体系を何時でも教科書無しで再構築できるはずです。
たとえばニュートン力学を理解して使いこなしている者ならば下のような `meter, `kg, `sec の基本単位とそれから導かれる組立物理量の概念を全て理解・体得しています。下のようなの基本単位から個別の組立単位にいたる入り組んだ道筋:組立て単位の体系網を理解しています。関連する単位系網の網目全部を一歩ずつ上流側から辿って、各編目の物理量の概念を理解していきながら、ニュートン力学を理解していきます。
例えば圧力という物理量の概念を体得・理解しているならば、圧力の具体的なイメージが頭の中に構築されています。圧力は単位面積当たりの力であると分っており、また圧力 x 面積が力であると分っているので、 1 気圧の圧力が 1`cm^2 に掛かる力 10.13`newton を頭の中で仮想的に感じることができます。1pascal = 1`newton/`meter = meter^-1 `kg `sec^-2 の関係式が、単位の一覧表など見ずに すらすら出てきます。
でも電磁量: MKSA 単位系となると、力学量のときとは異なり、組立単位物理量の概念の連鎖として、組立単位体系網として理解されていません。単位系網の網目を一歩ずつ辿る作業がなされません。大部分の方が `meter, `kg, `sec, `ampere の四つの基本単位から抵抗:`ohm/電圧:`volt/磁束密度:`weber などの組み立て単位をに至る道筋さえ明確にイメージできていないでしょう。
`meter, `kg, `sec `ampere --> `coulomb:`ampere `sec 抵抗 `ohm = meter `kg `sec^-3 `ampere^-1 電圧 `volt = meter^2 `kg `sec^-3 `ampare^-1 磁束密度 `kg `sec^-2 `ampare^-1
抵抗:`ohm = meter `kg `sec^-3 `ampere^-1 の単位次元は、式を弄くりまわし辻褄合わせにより導けます。ても辻褄合わせでは物理概念として理解・体得したことになりません。SI 単位系の表に抵抗の単位次元が meter `kg `sec^-3 `ampere^-1 と書いてあっても、日常的には `ohm=`volt/`ampere で考えています。この飛躍に納得できる説明ができなければ MKSA 単位系での抵抗概念を正しく理解・体得したことになりません。(`ohm = `volt/`ampere の理解で正しいことを後で説明します。)
MKSA 単位系で表される電磁量の体得・理解が難しいのは、電磁気学理論の理解が困難なうえに、Practical Unit System という捻りが追加されているためです。
MKSA 単位系 ≡ 難しい電磁気学理論(Maxwell 方程式) + `meter `kg `sec で記述する emu 単位系:absolute unit system) + Practical Unit System(Ohm の法則, 歴史的背景)
なお MKSA 単位系は emu 単位系と非常によく似ています。理論展開の筋道は emu 単位系と同じです。Practical Unit System を同時に可能にするための妥協の方策として `ε0 `μ0 の係数が入り込みました。真空の透磁率を無次元の 1 から 1.2566370614E-06 (== 4`π 1e-7 です) `newton `ampere^-2 ( 透磁率の意味ならば weber/(ampere meter) の単位次元にすべきです) と解り難い値にしました。このため MKSA 単位系を理解するには、夾雑物のない emu 単位系を理解から始めるのが結果的に早道となります。本稿は emu 単位系 → MKSA 単位系の順序で話を進めます。
単位系を理解するためには、その背景にある理論を理解していなければなりません。でも電磁気学は難しい理論です。電磁気の世界を記述する Maxwell 方程式は偏微分方程式です。しかも互いに関連しあう四つの方程式です。電磁気学は誰にでも理解できる理論ではありません。
さらに、四つの Maxwell 方程式は Lorentz 力の方程式によって力・エネルギーとの結び付けられます。電磁気の世界が力学の世界と接続されます。この接続を利用して電磁気の単位系は理論的に構築されます。F. Gauss と J. C. Maxwell により emu 単位系(absolute 単位系)として纏められました。
でも電磁気学から導かれた理論的な単位系は学者のための単位系です。電気・電子分野の設計に携わる多くの設計者は Maxwell 方程式ではなく Ohm の法則で理解しています。設計しています。単位系も Ohm の法則で理解しています。そのような単位系が Practical Unit System として、 emu 単位系と平行して、最初から使われていました。実務では Practical Unit System が最初から使われました。emu 単位系が Practical Unit System を理論付けていました。
MKSA 単位系は、emu 単位系を基本に Practical Unit System を混ぜ加える形式で纏められています。でも実用性を優先して理論的な見通しが悪くなったぶん、不必要に複雑になりました。理解が難しくなりました。
MKSA 単位系は、電磁気学を理解した後で体系的に説明されて、やっと理解できる単位系です。でも現実には電磁気学の教科書の最初で電流の定義が中途半端に解説される程度で済まされてしまっています。SI 単位系の規格書は結果を纏めてあるだけです。MKSA 単位系を定めた理由は書いてありません。電流定義で 1e-7 `newton の値を使う理由さえ示しません。MKSA 単位系の体系的な説明が面倒なためだと私は思っています。本来ならば MKSA 単位系は、電磁気の教科書で一章を割いて説明すべき重要・複雑さがあると思います。そんな説明を SI 単位系の規格書で行えないのも理解できます。その面倒な説明を朝鮮するのが本稿の主題です。
MKSA 単位系の理論的枠組みは emu 単位の枠組みと同じです。Lorentz 力の式から電流の基本単位を absolute に定義します。水銀柱の抵抗など、人間の勝手な都合でもちこんだ物質の抵抗ではなく、自然法則から absolute に単位電流を定義します。Lorentz 力の式から、電圧の基本単位も absolute に定義します。でも SI 単位系の規格書では、この電圧という基本単位の説明がなされずに meter^2 `kg `sec^-2 `ampere の単位次元が表の中の一項目として提示されるだけです。本稿では emu 単位系の説明の中で、`volt 基本単位について詳しく説明します。 Practical Unit System に妥協して合わせ込むため必要となる、理論的に纏まっている emu 単位系の変形の過程を明示的に示すことで、MKSA 単位系を理解していきます。新しく weber の磁束の単位を導入するに至った経緯を説明します。
現在では電磁気学で現れる物理量を表現するために MKSA 単位系使わざるをえません。MKSA 単位系を使わずには電気・電子回路の設計などできません。コンデンサやコイルの値さえ MKSA 単位系無しでは表現できません。MKSA 単位系は不必要に複雑になっているからといって、今さら別の単位系に逃げられません。我々は MKSA 単位系を正しく理解する以外の選択肢はありません。この文章の目的は MKSA 単位系の納得:正しい理解です。
以下では MKSA について非難がましい書き方を多用しますが、MKSA 単位系の理解が困難な個所を浮かび上がらせるためです。御理解願います。
SI 単位系の規格書は結果を纏めてあるだけです。理由を書いてありません。そのため MKSA 単位系には多くの不思議が散りばめられています。特に電磁気に関する部分に多くの不思議があります。
単位系を新規に作り直すのならば `meter, `gram, `sec を基本単位にしたほうが合理的だろうが。新たに `kg を採用するぐらいなら、元から有る cgs 単位系:`cm `gram `sec のままにしておいた方が混乱が少なくて済んだろうが。
新規に単位系を作るのならば 2`newton にしておいた方が単純だろうが。
抵抗などの単位次元を `meter `kg^-1 `sec^4 `ampere^2 などと表記しても殆ど意味がないだろうが。それぐらいならば MKS だけの単位系で `meter `sec^-3 と表示したほうが、より基本単位で表示できたことになるわ。単位次元に 0.5 の端数が出てきても問題ないぞ。それに実務で「100 `meter `kg^-1 `sec^4 `ampere^2 の抵抗」と言っても通用するわけないぞ。「100 `ohm の抵抗」と言わねばならないぞ。まさか M K S A の言葉に引っ張られて無理やり M K S A 単位に還元した表示にしようとしているのではないよな。
新規に単位系を定めるのだから、`ε0 `μ0 のような人為的な数を使ずに、光速度 c と 1 を使う単位系を作れたのに。新規に単位系を定めようとするのに、真空の透磁率を無次元の 1 にできなかったのかよ。
無次元の比例定数にすることもできたのに。その方が単純だろうが。
あらたに weber なんぞの単位を追加する意味があるのか
単位電流を定義しようとするのに `weber や `ampere の単位無次元を含む定数を持ってくるなんて循環論法だろうが。
SI 単位系よりも emu 単位系の方が理論的にであり奇麗・単純・素直なのに。emu 単位系ならば真空の誘電率/透磁率は光速度による換算係数であり、また無次元の 1 だろうが。混乱を招いてまで、解り難い MKSA 単位系を新しく導入する必要があったのかよ。emu 単位系の何が悪いちゅうんだよ。
失礼しました。口が悪くなってしまいました。育ちが悪いものですから。見逃してやってください。でも、このように MKSA 単位系を非難していても MKSA 単位系を使うなと主張しているわけではありません。現在では MKSA 単位系で表現しなければ電気・電子回路を扱えません。ただ MKSA 単位系の背景にある考えを知って欲しいだけです。私が MKSA 単位系を理解するためにした苦労を繰り返さずに済むように本稿を書いています。
上の疑問に答えるには歴史を振り返る必要があります。MKSA 単位系は歴史的経緯に妥協した単位系だからです。Practical Unit System の `ampere `volt `ohm に妥協した単位系だからです。
MKSA 単位系は emu 単位系を基本に Practical Unit System の捻りを加えて出来上がりました。 この MKSA 単位系を理解するためは、両者が使われてきた背景・電磁気の歴史につい知っておくことも重要です。下に電磁気に関係する主だったイベントを歴史年表として示します。
1800 年 | Volt の電推 |
1804 年 | 蒸気機関車の発明 |
1820 年 | Oerstead, Ampere が、電流の流れる電線の間に力が発生すること を発見した |
1826 年 | Ohm の法則の発表 |
1831 年 | M. Faraday の電磁誘導の法則 |
1833 年 |
F. Gauss が absolute 単位系を “Intensitas vis magneticae terristis in mensuram absolutam revocata.”論文で提唱した。 |
1835 年 | モールス信号と電信線を使った交信が始まった |
1836 年 | ダニエル電池の発明 |
1858 年 | 一回目の大西洋横断海底通信ケーブルを布設 |
1863 年 |
BAU(Britsh Association Unit) で J. C. Maxwell が中心となり emu 単位系を定めた。Pt-Ag 合金を使って emu 単位抵抗の 10^9 倍 ≡ 1 `ohm の practical な意味の標準抵抗を定めた |
1865 年 | Maxwell 方程式の発表 |
1867 年 | 明治維新:大政奉還 |
1872 年 | BAU が抵抗の単位を `ohm と呼ぶことにした。 |
1876 年 | A.G, Bell と E.Gray が電話を発明した |
1879 年 | エジソンが白熱電球を発明した |
1881 年 |
absolute/practical system of units が First International Congress of Electricians で定められ `volt, `ohm, `ampere, `colomb, farad の単位が承認された |
1882 年 | エジソンの電力システムが稼動を始めた。 |
1889 年 |
Second International Congress of Electricians `joule, watt の単位が承認された。 |
1892 年 | ウェストン標準電池 1.0183`volt at 20 celsius |
1892 年 | BAU が電流の silver ampere 定義を定めた |
1892 年 | O. Heaviside が有理化単位系を提唱 |
1892 年 | Lorentz 力を含む論文を H.A Lorentz が発表した |
1893 年 |
international ohm (重さが 14.4521`gram で、長さが 106.3cm の水銀の 0 度C における抵抗)を定めた。また international volt (Clark セルが 15度C で 1.434`volt) を定めた。 |
1897 年 | J.J. Thomson が電子を発見した |
1902 年 | G. Giorgi が MKS に R を追加した有理化電磁単位系を提唱した |
1904 年 | 力の単位 `newton が Robertson によって提案される |
1905 年 | 特殊相対論の発表 |
1960 年 | SI(International System of Unit) 単位系が定められる |
上の年表を眺めていると
emu 単位系を定めたときに、Pt-Ag 合金による標準抵抗が同時に作られ配布されました。その抵抗値は emu 単位系の 1 abohm ではなく、現在の 1 `ohm の値でした。(もともと 1abohm = 1ナノ`ohm です。こんな小さな抵抗値の標準抵抗は作れません。やはり emu 単位系は理論上の単位系です。) ですから最初に電磁量の単位系が定められたときから実用単位系 Practical Unit System が並存していたわけです。Practical Unit Sytem は emu unit system によって理論付けられながら、より精密な電流・抵抗・電圧値の実用的:Practical な単位定義の改定が繰り返されました。水銀柱による単位抵抗が、 またsilver ampere による単位電流が定義されました。
そして Practical Unit System でモーターや発電機が設計されるようになると watt == `volt * `ampere の単位が、`joule `newton の単位が使われるようになっていきます。これは機械系の設計で cgs 単位系と並行して `meter, `kg, `sec 単位系も使われるようになってきたことを意味します。これらの歴史背景の結果として MKSA 単位系に至ります。
力 1`newton 物理量概念の体得・理解電磁量の単位系とは無関係な話ですが、1`newton の力は、地球上で一個のりんごに働く引力と概ね同じ大きさの力です。Robertson おじさんも洒落た名前の付け方をするものです。
単位の付いている物理量は、1`newton:一個のりんごの重力による力のように自分の五感で感じられるレベルで理解すべきです。一方で電磁量は見えません。直接五感で感じられません。でも数値実験を繰り返しているうちに、電磁量も 1`newton と同程度に体得できる物理量になってきます。電磁気学を理解するためには、公式文字列を弄繰り回すだけでなく、具体的な装置に近い数値計算も必ず並行して行ってください。
その数値計算を行うとき sf が便利です。こちらも御試しください。
emu unit system は absolute unit system と呼ばれることもあります。最初に定められた電磁量の単位系ですが、奇麗にまとまっており理解しやすい単位系です。MKSA 単位系も殆ど同じ筋立てで構成されます。ただし MKSA 単位系は実用単位系 Practical Unit System への妥協と有理化の二つが入り込みます。その分だけ解り難い単位系です。まず単純な emu 単位系で、電磁量の理論的定め方を理解しましょう。
absolute 単位系は数学者として有名な F. Gauss に始まります。電磁単位系を質量、長さ、時間のみから理論的に定めることを意味します。「指定ゲージ,指定長さの電信線の抵抗、標準電池の電圧などの特定物質にしない電磁単位の定義である」ことを意味します。
全くの推測ですが absolute の形容詞には価値判断も入っていると思います。価値判断を含めなければ natural unit system とでもするはずです。Gauss の気持ちを下世話に代弁してみます。「俺の定めた absolute 単位系は自然:神の意志に沿ったものだ。人間の使っている電信線などを基準にしてない。どうだ。」---- 皆様はどのように思われるでしょうか。
emu unit system は F. Gauss の考え方を受け継ぎました。1863 年に British Association Unit で J. C. Maxwell が中心となって定めました。MKSA 単位系も emu 単位系の考え方の多くを受け継いでいます。MKSA 単位系を理解・体得するには、大多数の方にとって emu 単位系の理解から始めたほうが楽な道筋です。emu 単位系で記述する Maxwell 方程式のほうが単純だからです。
なお emu 単位系での単位電流/電圧/抵抗値は abampere/abvolt/abohm で表現されます。
単位電流とは 1`cm だけ離れた、並行する二本の直線電流 1`cm あたりに 2 dyne の力が発生する電流である ---- 1 abampare の定義 ----
この emu 単位系での単位電流の定義は、もう一捻りされて、現在の MKSA 単位電流の定義、 2e-7 `newton のマジック・ナンバーに入り込んできます。これについて Practical Uniit System のところで、再度言及します。
block電流定義と Maxwell 方程式Maxwell 方程式が発表されるのは、emu 単位系が制定された 2 年後です。でも単位電流の定義には 2dyne を使っています。1dyne ではありません。2dyne を使ったということは、下のような力の式を J.C. Maxwell が既に意識していたことを意味します。
df = I dl I' dl'/r^2たぶん Maxwell 方程式の大部分が既に彼の頭の中では具体的な形になっていたのだと思われます。
cgs emu 単位系での Maxwell 方程式は下のようになります。この Lorentz 力の方程式を使うことで、 emu unit system での基本単位電流・基本単位電圧を absolute に定義します。この二つを組み合わせて、他の電磁物理量の組立単位を導きます。
div E = `c^2 4π ρ ------------------ (emu-1) div H = 0 ---------------------------- (emu-2) rot E = -1 ∂H/∂t ------------------- (emu-3) rot H = 4π j + 1/`c^2 ∂E/∂t ------- (emu-4) 物質内 H = 空間 H + 4π M ------------ (emu-5) 物質内 E = 空間 E + 4π `c^2 P ------- (emu-6) Lorentz 力 dF = ρ E + I dl x H ------ (emu-7)
(emu-1),.. (emu-6) の六つの式が Maxwell 方程式であり電磁量の世界の運動を記述しています。(emu-7) の式は Lorentz 力を表します。これにより「電磁量の世界」と「質量の運動を記述する力学量の世界」を結び付けています。逆に (emu-7) の式による力学量の世界との結び付きを利用することで、電磁量を absolute に定義しています。水銀柱の抵抗などの人間が恣意的に定めた量ではない、自然法則によって定めた単位量にしています。
力学量の世界 Lorent 力 電磁量の世界 F = m α F = q E + j x H 四つの Maxwell 方程式 (`meter,`kg,`sec) の基本単位 運動する電荷と <E,H> の間に div E = c^2 4π ρ 物理量と組み立て単位物理量の 働く 力 div H = 0 世界 rot E = -1 ∂H/∂t rot H = 4π j + 1/c^2 ∂E/∂t 図 Lorenzt 力による力学量と電磁気量の接続
ただし、Lorentz 力から単位電流を absolute に定めるためには、電荷が電流の時間積分であることを知っている必要があります。Maxwell 方程式から導かれる電磁場と、運動する電荷の間の式(Lorentz 力, Biot-Savart law:ビオ・サバールの法則を理解している必要があります。それの直線電流への応用を知っている必要があります。
q = ∫ I dt dH = q v × r/abs(r)^3 F = 2 I I'/abs(r)
Lorentz 力の電場:E の側での力学量との結びつきを使って abvolt も absolute に定義します。 そのために、Lorentz 力の式を、磁場が 0 であるときの式に変形します。
F Δl = q E Δl <==> ΔE = q ΔV
そして下のに単位電圧を定義します。この単位電圧は abvolt( absolute volt) と呼ばれます。
単位電圧とは単位電荷に 1erg = 1`cm^2 `gram `sec^-2 のエネルギーを与える電位差である ---- 1 abvolt の定義 ----
このように定義した電圧から導かれる電場 abvolt/`cm の物理量で Maxwell 方程式を記述すると (emu-1) の電荷量と電場の関係式に光速度の自乗: `c^2 の比例係数が入り込んできます。(これにより光が電磁波だとする強い根拠になりました。) 「電流:abampere( absolut ampere)」と「電圧abvolt(absolute volt)」二つの基本単位が absolute に定義されれば、残りの電磁量は この二つの基本単位の組み合わせからなる組み立て単位として扱えます。
ここで emu 単位系(absolute 単位系) では、電流だけでなく 電圧も absolute に定義されていることに注意してください。Lorentz 力の j × H により磁場の側の基本単位:電流を、q E により電場の側の基本単位:電圧を absolute に定義しています。MKSA 単位系では電流の定義が前面に出すぎて電圧も基本単位であることが見逃されています。電流が誘導単位だとするならば、電流定義から、磁場の無いときの Lorentz 力 F = q E が導けねばなりません。それは無理です。 emu 単位系では F= q E で電場の側の単位系を定めることで、電場の世界と磁場の世界を接続する個所で `c^2 が出てくる構成になっています。q = ∫jdt だからといって電圧が組み立て単位になるわけではありません。間違えないで下さい。
emu 単位系での電磁物理量の単位次元の表記は 0.5 の べき乗を使う意味で異質です。`cm, `gram, `sec の基本単位に対して、0.5 のべき乗も使って単位次元の体系を表します。「absolute unit system の意味」すなわち「`cm `gram `meter の力学量の基本単位から導いた意味」を込めているためでしょう、
単位電流の定義から分るように emu 単位系での電流は基本単位ではなく力学の基本単位からの組み立て単位です。二本の直線電流に働く力によって基本単位電流を定義したのですから、電流の単位次元は [dyne]^0.5 = `cm^0.5 `gram^0.5 `sec^-1 となります。単位電荷 abcoulomb の単位次元は [∫I dt] = cm^0.5 `gram^0.5 です。
単位電圧 abvolt の単位次元は下のようになります。
1 erg = 1 abcoulomb * 1 abvolt [1 `cm^2 `gram `sec^-2] = [1 abcoulomb]* cm^0.5 `gram^0.5 ∴ [1 abcoulomb] = `cm^1.5 `gram^0.5 `sec^-2
単位抵抗 abohm の単位次元は下のようになります。
[R] = [V/I] = cm^1.5 `gram^0.5 sec^-2 /(`cm^0.5 `gram^0.5 `sec^-1) = `cm `sec^-1
物理量 | `cm `gram `sec |
電流 | `cm^0.5 `gram^0.5 `sec^-1 |
磁場 | `cm^-0.5 `gram^0.5 `sec^-1 |
電荷 | `cm^0.5 `gram^0.5 |
電束密度 | `cm^1.5 `gram^0.5 |
抵抗 | `cm `sec^-1 |
電圧 | `cm^1.5 `gram^0.5 `sec^-2 |
電場 | `cm^0.5 `gram^0.5 `sec^-2 |
磁束:磁荷 | `cm^1.5 `gram^0.5 `sec^-1 |
このような単位次元の定め方は、一般の人間では追従できません。電流の単位次元を cm^0.5 `gram^0.5 `sec^-1 では線形関係さえ崩れています。普通の人間が体得・理解できるのは線形関係にある物理量に限られます。一方でオームの法則 V = R I は線形です。(より厳密には bi-linear です。) 二つの基本量、例えば `ampere と `volt を定めれば、後の抵抗や、コンデンサ容量などの電磁物理量は線形な関係で導かれる組み立て単位として定めていけます。2 dyne の力による電流定義は、電磁気の世界と、`meter, `kg, `sec の力学の世界を学術的に結び付けている式と理解したほうが良さそうです。電流の単位次元 `cm^0.5 `gram^0.5 `sec^-1 から他の電磁量を組立単位によって一歩ずつ導いていくのは無理です。
私は天才 J. C. Maxwell でさえ電磁量の単位次元は Ohm の法則から理解していたと思っています。彼も普段は `cm, `gram,`sec のべき乗の組み合わせで表す emu 単位次元では考えていなかったと思います。0.5 のべき乗が入り込んでくる emu 単位次元は理論上の単位次元とみなし、実際に使う単位系とは区別していたはずです。emu 単位系を定めたとき abohm とは別に、現在の 1 ゛ohm と同じ抵抗値を持たせた標準抵抗を Pt-Ag 合金で作成し配布していたことが、その一つの根拠です。
emu 単位系を定めたときには、まだ ampere や ohm volt といった単位系の名称はありませんでした。単位電流や単位抵抗などといっていましぬ。ですから単位次元をあらわすとき `cm `gram `sec だけで表さざるをえませんでした。0.5 のべき乗が入る単位表示になってしまいました。最初に emu 単位系を absolute に定めた視点からすれば、それも理解できます。でも物理量の物理的意味を掴み難い単位表示です。
でも `ampere や `volt が基本単位として理解されている現在の視点から見直し、同時に力学量のみで電磁単位系を表示するという制限も満たすために erg と dyne^0.5 を導入してやると emu 単位系の物理的意味を明確にできます。元々の電流定義は二本の直線電流の間に働く単位長当たりの力が I^2/r に比例することで行いました。ならば電流の単位次元は dyne^0.5 と見なせます。電荷:∫Idt の単位次元は dyne^0.5 `sec になります。一方で ΔE =fΔL = q EΔL = q ΔV から電圧の単位次元は erg (dyne^0.5)^-1 `sec^-1 になります。これらを組み合わせ、主だった電磁量の単位次元を下のように表せます。
物理量 | erg dyne^0.5 `cm `sec | abampere abvolt `cm `sec | `cm `gram `sec |
電流 | dyne^0.5 | abampere | `cm^0.5 `gram^0.5 `sec^-1 |
磁場 | dyne^0.5 `cm^-1 | abampere `cm^-1 | `cm^-0.5 `gram^0.5 `sec^-1 |
電荷 | dyne^0.5 `sec | abampere `sec | `cm^0.5 `gram^0.5 |
電束密度 | `dyne^0.5 `cm^-2 `sec | abampere `cm^-2 `sec | `cm^1.5 `gram^0.5 |
抵抗 | erg (dyne^0.5 `sec)^-1 | abvolt/abampere | `cm `sec^-1 |
電圧 | erg (dyne^0.5)^-1 `sec^-1 | abvolt | `cm^1.5 `gram^0.5 `sec^-2 |
電場 | erg (dyne^0.5)^-1 `sec^-1 `cm^-1 | abvolt `cm^-2 | `cm^0.5 `gram^0.5 `sec^-2 |
磁束:磁荷 | erg (dyne^0.5)^-1 | abvolt `sec | `cm^1.5 `gram^0.5 `sec^-1 |
上の表を見ていると `kg が現れてこないことに気付きます。磁場の世界は `cm `sec と abampere (力学量で absolute に表せば dyne^0.5ョ の組み合わせで記述される世界であることが解ります。電場の世界は `cm `sec と abvolt (力学量で absolute に表せば erg (dyne^0.5)^-1 `sec^-1)の組み合わせで記述される世界であることが解ります。抵抗は磁場の世界と電場の世界の両方に繋がる網目の間にある物理量:単位であることも解ります。
emu 単位系では、Lorentz 力により単位電流と単位電圧を absolute に定義したために、電場系の世界と磁場系の世界をを等式で結び付けようとするとき、光速度 `c の 換算係数が入り込む様子を erg と dyne^0.5 を使った電磁量の単位次元表記を使って見てみましょう。
abampere と abvolt 基本単位から始まる電場/磁場の世界の組立単位網を下のように表現できます。電場と磁場の世界をまたが基本単位である電流から組み立てられた磁場の時間変化と基本単位である電圧との間に電磁誘導の法則が成り立ちます。
そして基本単位電流:(dyne)^0.5 基本単位電圧:erg (dyne^0.5 `sec)^-1の単位次元を使うと div E = c^2 4 `π ρ に出てくる係数 c の単位次元が速度であることが、下のように簡単に導けます。
[div E] = c^2 [ρ] ↓↑ (abvolt/`cm)/`cm = c^2 (abampere `sec)/`cm^3 ↓↑ erg (dyne^0.5 `sec)^-1 `cm^-2 = c^2 dyne^0.5 `sec `cm^-3 ∴ erg `cm^-2 = dyne `cm^-1 = c^2 (dyne^0.5 `sec)^2 `cm^-3 ∴ [c^2] = cm^2 `sec^-2 = `[cm/`sec]^2
一方で MKSA 単位系では 4`π `c^2 と 1 は `ε0/`μ0 は誘電率/透磁率の単位次元になってしまいます。速度^2 の単位次元や無次元ではなくなってしまいます。MKSA 単位系では、電場系の物理量と磁場系の接続が div E = `c^2 4`π ρ の陽に現れる式ではなくなります。 D = `ε0 E の側に隠されてしまいます。div D = ρ では電場系の物量と磁場系の物理量の関係式であることが隠れてしまいます。1`meter 離した 1`coulomb の電荷どうしに働く力が 90 億`newton であることが見えなくなってしまいます。`coulomb が ∫I dt で表される電流・磁場系の単位であることが認識されていれば、電荷どうしに働く電場系の力を求めるとき c^2 が入ってきて極端に大きな値になることが直感的に分るのですが、それが `ε0, `μ0 で隠されてしまいます。この意味で MKSA 単位系は電磁気学を理解するためには不適切です。ですから自前の単位系を導入する電磁気の教科書が何冊も書かれることになります。
今までの議論から下のことに同意してもらえると思います。
J.C Maxwell が emu 単位系を定めた 1863 年には、既に電圧/電流/抵抗の電磁量は Ohm の法則によって理解されていました。それで実務設計がなされていました。既に大西洋を横断する通信線さえ敷設されていました。でも電磁単位系が統一されていませんでした。そのために大西洋横断通信ケーブルでは大きなトラブルが発生したりしていました。まだ Maxwell 方程式はできておりません。
通信装置の仕様を定めたエンジニア達は、既に存在している電池により電圧量の概念を把握していました。数マイルの長さの通信線の抵抗値として抵抗量の概念を把握していました。モールス符号受信機の鉄片を引き付ける電流量の概念を把握していました。この三つの量をオームの法則で組み合わせて、モールス通信装置を設計していました。
一方で emu 単位系によって 電流:abampere、電圧:abvolt、抵抗:abohmの電磁量を力学量 `cm, `gram, `sec から absolute に定められました。でも Ohm の法則で設計しているエンジニア達には Maxwell 方程式を前提とする emu 単位系は難しすぎます。しかも abvolt, abohm の基本単位量が小さすぎて現実の設計には使えませんでした。これらを現在の `volt, `ohm で表すと下のようになります。こんな absolute な単位系では実用になりません。
1abvolt = 1e-8 `volt ---- 電波がマイクロ `volt/`meter で扱われます 1abohm = 1e-9 `ohm ------ こんな小さな抵抗値を使うのは超伝導での残留抵抗ぐらいです
そのため abamprere, absvolt, abohm とは別に practical な基本量を定める必要がありました。そして 1 abvolt の 10^8 倍を practical な単位電圧と定めました。1 abvolt を 10^8 倍した電圧がボルタの電池などの金属の接触電位差による電圧に近くできるからです。この practical な単位電圧が、現在使われているのと同じ 1`volt の単位電圧です。1 abohm の 10^9 倍の値を実用的な単位抵抗と定めました。その当時に使われていた通信線の抵抗値に近い値を選択するため 10^9 を選択しました。その抵抗値は現在使われてる 1`ohm の単位抵抗と同じです。この practical な単位抵抗値を持たせた標準抵抗を Pt-Ag 合金で作り emu 単位系の策定と同時に配布しました。このように practical な単位電圧と単位電流が abvolt/abohm の 10^8/10^9 とされたため、practical な単位電流は V = R I より 1 abampere の 10^-1 になってしまいました。この単位電流量は現在の 1`ampere と同じです。
元々 `volt, `ohm, `ampere は物理量の単位ではなく、現在の Mega/Giga などと同様な、absolute 単位に対し桁数を表す符号だったそうです。ここに次のように書いてあります。「When units called ohm, ampere, and volt were introduced to satisfy practical needs of electrical engineers, they were meant to be integral multiples of the corresponding em units. Thus, one ohm was meant to be 10^9 em units of R, one ampere was meant to be 10^-1 em units of I, and one volt was meant to be equal to 10^8 em units of potential difference,」訳してみます。「ohm ampere volt の呼称は電気エンジニアたちによる実用性の要求に配慮して導入されました。それらは emu 単位系の単位抵抗/電流/電圧に対する桁数倍を意味していました。1 ohm は emu 単位抵抗の 10^9 倍を意味していました。ampere は emu 単位電流の 10^-1 を意味していました。1 volt は emu 単位電位差の 10^8 を意味していました。」
上の英文は `volt, `ohm, `ampere が桁数の意味だったと書いていますが、当時のエンジニア達は `volt, `ohm, `ampere を最初から practical な意味での単位だと解釈していたと推測されます。まだ Maxwell 方程式もできていない時代に、J. C. Maxwell が定めた学術的な absolute 単位系の意味が、Ohm の法則で考えている当時のエンジニア達に的確に理解されたとは思えません。``cm^0.5 `gram^0.5 `sec^-1 と表される電流の単位次元が実務畑のエンジニアに受け入れられたとは思えません。(T.A. Edison は交流理論を理解できなかったそうです)エンジニア達の共通言語としての practical な単位電流、単位電圧、単位抵抗を学者達が決めてくれたから、それを実務で使っただけでしょう。そのとき直ぐに`volt, `ohm, `ampere は桁数の意味ではなく単位の意味と解釈されるようになったと私は推測します。皆様はどう考えますでしょうか。
ここで `ampere が 1/10 の意味であったことに二つの意味で注目せねばなりません。一つは MKSA 単位系における 2e-7 `newton が導かれることです。 もう一つは emu 単位系を定めたときに Maxwell が 抱いていた電磁単位量の把握の仕方が伺えることです。
absolute amprere の 1/10 が practical な電流の基本単位だとする考えは現在でも MSKA 単位系の 2e-7 newton に受け継がれています。1 absolute ampere を流している 1`cm あたりに働く力が 2 `dyne でした。2`dyne = 2e-5 `newton です。MKSA 単位系の電流定義で出てくる力:2e-7`newton より二桁小さい理由は 桁数調整数 `ampere:1/10 の電流が二本の電製に流れているせいです。このような経緯で emu 単位系の電流定義が MkSA 単位系での電流定義に現れるマジック・ナンバー 2e-7 が定まりました。
ampere を 1/10 の意味にしたことは、天才 J.C. Maxwell さえも電磁物理量をオームの法則から把握していたことを伺わせます。もし J.C. Maxwell が電磁物理量を [1 abampere] == cm^0.5 `gram^0.5 `sec^-1 の 0.5 べき乗が入る単位次元で理解していたのならば、1 abampere と practical な ampere を同じにしたはずです。一桁ぐらい誤差の範囲ですから `ampere に 1/10 の意味を与える必然性はありません。1`volt を 10^8 abvolt にする代わりに 10^9 abvolt にするだけで済みます。そうすれば `volt も抵抗のときと同じ倍率にできます。どちらも Giga:10^9 の桁にできます。J.C. Maxwell も `ampere の基本単位量の値に拘っていなかったから、即ち「 Maxwell も日常的には Practical Unit System で考えていたから、当時使われていた電池の電圧と通信線の抵抗に一番近い桁数を素直に選択した」と私は思っています。この点について否定・肯定するような事実・資料がありましたら御教え願います。
当時の通信線の設計で使っていた電圧値/抵抗値/電流値に合わせて 1`volt==10^8 abvolt, 1`ohm==10^9 abohm, 1`ampere==10^-1 abampere を選択したことは、MKSA 単位系で `gram ではなく `kg を選択さざるをえなかったことに繋がります。1`volt の電圧で 1`ampere の電流を流したとき、一秒あたりに発生するエネルギー:発熱量は 1`volt * 1`ampere = 1watt = 1`joule/`sec です。1`joule = 1`newton `meter/`sec = 1`kg `meter^2 `sec^-3 です。ですから Practical Unit System: `volt, `ampere を使ってモーターや発電機などを設計するとき `meter `kg `sec を使って力やエネルギーを表現しておかないと、余分な比例係数に付きまとわれます。先に示した電磁気年表で「 1863 年 emu 単位系 ---> 1889年 `joule の単位 --> 1904 年 `newton の単位」と MKSA 単位でも使われる単位が導入されていく様子が、この推測を裏付けてくれます。(ちなみに 1 abvolt * 1 abampere = 1 erg/sec です) もし J.C. Maxwell が abampere に拘って practical `volt == 10^9 abvolt を選択していたら MKSA 実用単位系は違った形になったでしょう。`meter, decaKiloGram, `sec 単位系などとなったのでしょうか。それとも三桁刻みにならないため、比例係数を使いながら cgs 単位系でモーターや発電機の設計を続けたのでしょうか。皆様はどのように考えますでしょうか。
MKSA 単位系に移る準備のため、電流定義での力が 2 dyne ではなく k 倍の力:2 k dyne となったときを考えてみましょう。すなわち単位電流が k^0.5 倍になった新しい単位系の世界での Maxwell 方程式を考えましょう。(なお、ここで k は物理的には無次元の比例係数であることを覚えておいてください。後の MKSA 単位系での `ε0, `μ0 の単位次元の議論で、ここでの話を生し返します)
直線電流同士の間に働く力が 2 k dyne であり
F = 2 k I I'/!abs(r)
dH = dI × r/(!abs(r)^3 ) # dH, dI, r は vector
一方で Δエネルギー = q V ですから、単位電流量が k^0.5 倍になると単位電圧量は k^-0.5 倍になります。単位電場量も同様に k^-0.5 倍になります。ですから新単位系で数値化した電圧/電場値を、元の emu 単位系での値にするには、新電圧/電流を k^-0.5 することになります。
新単位系で数値化したとき、それに k^0.5, k^-0.5 倍を掛けて emu 単位で値にしたときに Maxwell 方程式を満たすので、新単位系で表した電磁量は下の方程式を満たします。
div k^-0.5 E newVolt/`meter = 4`π c^2 k^0.5 ρ newCoulomb ∵ k^-0.5 E newVolt/`meter == E abvolt/`cm k^0.5 ρ newCoulomb == ρ abcoulomb H も I と同様に k^0.5 倍されます。 dH newWeber/`cm^2 = dI newAmpere × r/!abs(r)^3 即ち rot k^-0.5 H newWeber/`cm^2 = 4`π k^0.5 j + 1/`c^2 k^0.5 ∂(E newVolt/`cm)/∂t
すなわち直線電流に働く力 2 k dyne で単位電流量を定義した新電磁単位系で記述した電磁量の数値の間には下の Maxwell 方程式が成り立つことになります。また点磁荷が r の位置に作る磁場 H の強さが H = qm/r^2 であることより磁荷の数値も H と同様に k^-0.5 倍に変化して測定されます。M も H と同様に k^-0.5 倍に変化します。元の Maxwell 方程式での電磁量の関係式を満たしつづけるためには M を k^0.5 倍にしてやらねばなりません。ここで M を磁場 H を生成する磁荷の意味で Mh と表すようにしておきます。MKSA 単位系では磁場とは別の単位次元を持つ物理量として磁束密度が導入され、磁荷も磁束密度を生成するものと大きく変えられるためです。
div k^-0.5 E = 4`π c^2 k^0.5 ρ ------------------------ (kemu-1) dir k^0.5 H = 0 ---------------------------------------- (kemu-2) rot k^-0.5 E = -k^0.5 ∂H/∂t --------------------------- (kemu-3) rot k^0.5 H = 4`π k^0.5 j + 1/(c^2) k^-0.5 ∂E/∂t ---- (kemu-4) 物質内 k^0.5 H = 空間 k^0.5H + 4π k^0.5 Mh ------------- (kemu-5) 物質内 k^-0.5 E = 空間 k^-0.5 E + 4π c^2 k^0.5 P ------- (kemu-6) dF = ρ E + I dl x H ------------------------------------ (kemu-7) dH = dI × r/!abs(r)^3 # dH, dI, r は vector
同じ式ですが、もう少し MKSA 単位系での Maxwell 方程式に近い形式で表します。
div 1/(4`π c^2 k) E = ρ ------------------------------ (kMKS-1) dir k H = 0 -------------------------------------------- (kMKS-2) rot E = -k ∂H/∂t -------------------------------------- (kMKS-3) rot 1/(4`π) H = j + 1/(4`π c^2 k) ∂E/∂t ----------- (kMKS-4) 物質内 H = 空間 H + 4π Mh ------------------------------ (kMKS-5) 物質内 1/(4`π `c^2 k) E = 空間1/(4`π `c^2 k) E + P ---- (kMKS-6) dF = ρ E + I dl x H ------------------------------------ (kMKS-7) dH = dI × r/!abs(r)^3 # dH, dI, r は vector k は無次元の比例係数 ------------ 2k dyne の力で定義した電磁単位系で成り立つ Maxwell 方程式 ----------
上の式で k は無次元の比例係数です。単位距離だけ離した直線電流の単位長さ当たりに働く力を 2 k dyne としたからです。このことを MKSA 単位系を論じるときに使います。
「2k dyne の力で定義した電磁単位系で成り立つ Maxwell 方程式」は 2k `newtonの力で定義した電磁単位系で成り立つ Maxwell 方程式と読み直せます。MKSA 単位系で k は 1e-7 の無次元数です。電圧は `joule = q [`coulomb] V [`volt] より定めます。これに有理化とε0 μ0 を追加してやれば MKSA 単位系になります。でも MKSA 単位系では μ0 を無次元の比例係数から単位次元付きの係数にします。電磁量の単位次元の解釈を変えてしまいます。これが MKSA 単位系を解り難くしています。
有利化とは Maxwell 方程式から 4`π の係数をなくすことです。点電荷が r だけ離れた位置に作る電場の強さを q/(4π r^2) と比例するとみなすことで、 Maxwell 方程式から 4π を無くすことと等価です。 div 1/(4`π c^2 k) E = ρ は点電荷が単位距離の位置に作る電場が下の式で表されること等価です。
div 1/(4`π c^2 k) E = ρ ↑↓ E(r) = q r/(4`π c^2 k) abs(r)^3 # r は vector
電場と同様に磁場についても微小電流が作る磁場が dH = dI × r/(4`π!abs(r)^3) 比例するとして有利化してやります。磁場 H の数値が 1/(4`π) 倍だけ小さくなるわけです。Maxwell 方程式上では H が 4`π 倍だけ大きくしてやることで物理量の関係式を普遍に保ちます。下の Maxwell 方程式になります。
div 1/(4`π c^2 k) E = ρ ------------------------------ (rkMKS-1) dir (4`π k H) = 0 ------------------------------------- (rkMKS-2) rot E = -∂(4`π k H)/∂t ------------------------------- (rkMKS-3) rot H = j + 1/(4`π c^2 k) ∂E/∂t -------------------- (rkMKS-4) 物質内 (4`π H) = 空間 (4`π H) + 4π Mh ---------------- (rkMKS-5) 物質内 (4`π k H) = 空間 (4`π k H) + 4`π k Mh --------- (rkMKS-5') 物質内 1/(4`π `c^2 k) E = 空間 1/(4`π `c^2 k) E + P --- (rkMKS-6) dF = ρ E + I dl x 4π k H ------------------------------ (rkMKS-7) 4`π k dH = 4`π k dI × r/(4`π!abs(r)^3) # dH, dI, r は vector 注意:k は無次元の比例係数 2k `newton の力で定義した電磁単位系で成り立つ Maxwell 方程式 1
有利化有利化とは q/r^2 よりも div E = ρ のほうが本質的だととみなすこと等価です。点電荷が r の位置に作る電場の大きさが q/(4`π r^2)と見なすことと等価です。下の三つの式が等価だからです。
div E = ρ ↑↓ 4 `π r^2 E(r) = Q ↑↓ E(r) = Q/(4 `π r^2) ↑↓ V(r) = Q/(4 `π r)
「2k `newton の力で定義した電磁単位系で成り立つ Maxwell 方程式」で ε0 = 1/(4`π `c^2 k), μ0 = 4`π k, M = 4`π k Mh と置いてやれば殆ど MKSA 単位系で記述した Maxwell 方程式です。
div `ε0 E = ρ ------------------------------------ (rMKS-1) dir `μ0 H = 0 ------------------------------------- (rMKS-2) dir H = 0 ------------------------------------------ (rMKS-2') rot E = -∂(`μ0 H)/∂t ----------------------------- (rMKS-3) rot H = j + ∂(`ε0 E)/∂t ------------------------ (rMKS-4) 物質内 (`μ0 H) = 空間 (`μ0 H) + M ----------------- (rMKS-5') 物質内 ε0 E = 空間 `ε0 E + P ---------------------- (rMKS-6) dF = ρ E + I dl x 4π k H -------------------------- (rMKS-7) `μ0 dH = `μ0 dI × r/(4`π!abs(r)^3) # dH, dI, r は vector 但し `μ0 = 4`π k, `ε0 = 1/(4`π c^2), k = 1e-7 注意:μ0 は無次元であり `ε0 は 「1/速度の自乗」の単位次元を持つ比例係数 2k `newton の力で定義した電磁単位系で成り立つ Maxwell 方程式 2
上の式で B = `μ0 H, D = `ε0 E と置き換えれば MKSA 単位系における Maxwell 方程式と瓜二つです。でも `μ0 は無次元の比例係数です。ただ電磁誘導により磁場 H の時間変化が電圧を発生させるとき B = `μ0 H = 4`π k H と `μ0=4`π k 倍だけ大きくした磁場を使うとしている点で MKSA 単位系での Mawell 方程式と異なっています。まだ `μ0 は無次元の比例係数です。
div D = ρ ------------------------------------ (MKS-1) dir B = 0 ------------------------------------- (MKS-2) rot E = -∂B/∂t ------------------------------- (MKS-3) rot H = j + ∂D/∂t -------------------------- (MKS-4) B = `μ0 H + 4`π k M -------------------------- (MKS-5) D = `ε0 E + P --------------------------------- (MKS-6) dF = ρ E + I dl x 4π k H --------------------- (MKS-7) `μ0 dH = `μ0 dI × r/(4`π!abs(r)^3) # dH, dI, r は vector 但し `μ0 = 4`π k, `ε0 = 1/(4`π c^2), k = 1e-7 注意:まだ `μ0 は無次元であり `ε0 は 「1/速度の自乗」の単位次元を持つ比例係数です。 MKSA 単位系直前の電磁単位系で成り立つ Maxwell 方程式
先の「電磁誘導により磁場 H の時間変化が電圧を発生させるとき B = `μ0 H = 4`π k H と `μ0=4`π k 倍だけ大きくした磁場を使う」ことは物理法則として不自然です。でも Practical Unit System に妥協して電流定義に k=1e-7 のマジック・ナンバーを入れたための入り込んできた不自然さだからしょうがありません。k を 1 以外の値にすれば磁場の世界と電場の世界を結びつける方程式に k が入り込むことを避けられません。
MKSA 単位系の作成者達は、ここでウルトラ C を考え出します。B = `μ0 H で `μ0 に単位次元を与えて B と H を別の物理量にしてしまう方法です。下の事情を考えれば B と H を別の単位次元にしてしまうことに同情もできます。gauss と oersted の代わりに weber/`meter^2 と `ampere `meter^-1 を使っても良いとしたのも頷けます。
でも、物理法則の記述で同一単位次元であるか否かは大きな意味を持ちます。本来は B と H は同じ単位次元を与えるべきものです。物質が介在しなければ B と H は同じ物理量です。実際に emu 単位系では同じ物理量でした。それが人間の都合で別の単位次元を与えてしまうなんてとんでもない話です。無用な混乱の元になります。B と H を同じ単位次元とする単位系だったら E/B, E/H 論争など起こらなかったはずです。
B と H を別の単位次元にしたことは、基本単位から組立単位を導いていく連鎖を分り難くする弊害も発生します。下の組立単位の導出順序を再確認ください。
μ0 の単位次元を、二本の直線電流の間に働く力の公式 f `newton/`meter= `μ0 I^2/r から `[μ0] = `newton ampere^-2 と導く方が多くいます。でも、このように陰な `μ0 の単位次元の導き方は辻褄合わせです。陰な導き方のため。物理的意味が不明確になってしまいます。
物理的意味が不明確なまま、あって欲しい結果の側から陰に導いた [`μ0 ] == `meter `kg `sec^-2 `ampere^-2 で済ましているのでは、透磁率の単位次元を物理的に理解したとは言えません。常に単位系の表を持ち歩いて、それで参照しながらでないと物理式の正しさが確認できない段階のままです。物理式で単位次元の誤りが入り込んでいないかをコンピュータ・ソフトに頼って判断してもらうようになってしまいます。
ここでは `μ0 の単位次元を陽に導きます。基本単位から始まる道を辿って `μ0 の単位次元を導きます。B と H の組立単位を基本単位 `volt, `ampere から導き、B = `μ0 H の元の定義から `μ0 の単位次元 [B/H] を導きます。
MKSA 単位系では、下のような磁束の時間変化と発生電圧の間に余分な比例係数 k が出ないように磁束の組み立て単位 `weber を新た導入しました。
rot E = -∂B/∂t ↑↓ 発生電圧:`volt = ∫E dl = ∂(∫Bds)/∂t = dΦ/dt
一方で H は磁場側の物理量です。dH = dI/(4`π r^2) = Idl/(4`π r^2)です。ですから [H] = `ampre `meter^-1 です。B と H の単位次元が導ければ `μ0 の単位次元は陽に定まります。
B = `μ0 H ですから [`μ0] = [B/H] = `weber `meter^-2/(`amper `meter^-1) です。物理的意味は [磁束密度/磁場]です。`コイルの組立単位 [henry] = `weber/`ampere より [`μ0] = henry/`meter とあらわすこともあります。μ0 = 4`π k, k = 1e-7 です。`μ0 = 4`π 1e-7 == henry/meter です。
電流定義と`μ0二本の直線電流の間に働く力は `μ0 を使って下のように表現できます。
f = `μ0 I I'/rでも MKSA 単位系の電流定義には上の式を使うべきではありません。二本の直線電流の間に働く力が下のように電流に比例し、距離に反比例することを使って r=1`meter f=2e-7 `newton のときの電流値を 1`ampere と定義しただけです。このときの 2e-7 は、上に出てきた無次元の k です。
f ∝ I I'/r電流定義の段階から f = `μ0 I I'/r と `μ0 の入る式を使ったのでは循環論法になってしまいます。
上で磁束の物量、組立単位 `weber = `volt `sec を導きましたが、これは下のような関係から磁荷の単位とも見なせます。
div B = ρm ↑↓ B = Qm/(4`π r^2) ↑↓ H = Qm/(4`π `μ0 r^2)
そして SI 単位系は磁石の分野でも磁束密度を `weber/`meter で表すうにように要求します。法律でも gauss/oersted の使用は禁止されました。
でも元々磁石関連の分野は、合理的な emu 単位系で表記してきました。真空の透磁率は 1 であり、B と H は同じ物理量:単位次元でした。磁石起因の磁場を gauss で表し、電流起因の磁場を oersted で表していただけでした。
そこに Practical Unit System での辻褄合わせで導入された weber の単位を使えといっても使えるわけがありません。磁束密度と磁場を異なる単位次元で扱えなどという不合理な要求が呑めるはずありません。MKSA 単位系が定まってから 60 年、エンジニアが二世代変わっても gauss/oersted の単位系が使われるのは、技術屋として良く解ります。皆様は如何でしょうか。
ε0 の陽な単位次元の導出は下のように簡単です。物理的意味も下の式で解るでしょう。
div D = ρ ↑↓ `ε0 div E = ρ ↑↓ E = Q/(4`π `ε0 r^2) ∴ [`ε0] = `coulomb/(`meter^2 [E]) = `coulomb/(`meter^2 `volt/`meter) = `coulomb/(`meter `volt) = `farad/`meter = (`coulomb/`volt)/`meter
ここままで述べてきたように MKSA 単位系は、言葉の表現とは裏腹に MKS `ampere `volt と捉えるべきです。その理由を再度下にまとめます。
MKSA 単位系での電磁単位系の一覧表を `joule, `newton, `ampere, `volt, `meter, `kg, `sec の組合せによる、四種類の組立単位の一覧表として表します。
物理量 | `meter `kg `sec `ampere `volt | `joule (1e-7`newton)^0.5 `meter `sec | `ampere `meter `kg `sec | `meter `kg `sec |
電流 | `ampere | (1e-7`newton)^0.5 | `ampere | `meter^0.5 `kg^0.5 `sec^-1 |
磁場 | `ampere `meter^-1 | (1e-7`newton)^0.5 `meter^-1 | `ampere `meter^-1 | `meter^-0.5 `kg^0.5 `sec^-1 |
電荷 | `ampere `sec | (1e-7`newton)^0.5 `sec | `ampere `sec | `meter^0.5 `kg^0.5 |
電束密度 | `ampere `meter^-2`sec | (1e-7`newton)^0.5 `meter^-2`sec | `ampere `meter^-2 `sec | `meter^1.5 `kg^0.5 |
抵抗:`ohm | `volt/`ampere | `joule (1e-7`newton^0.5 `sec)^-1 | `meter `kg `sec^-3 `ampere^-1 | `meter `sec^-1 |
コンデンサ容量:`farad | `volt^-1 `ampere `sec | `joule^-1 (1e-7`newton^0.5 `sec) | `ampere^2 `meter^-2 `kg^-1 `sec^4 | `sec |
電場 | `volt meter^-1 | `joule (1e-7`newton)^-0.5 `sec^-1 `meter^-1 | `meter `kg `sec^-3 `ampere^-1 | `meter^0.5 `kg^0.5 `sec^-2 |
電圧 | `volt | `joule (1e-7`newton)^-0.5 `sec^-1 | `meter^2 `kg `sec^-3 `ampere^-1 | `meter^1.5 `kg^0.5 `sec^-2 |
磁束:磁荷 :`weber | `volt `sec | `joule (1e-7`newton)^-0.5 | `meter^2 `kg `sec^-1 `ampere^-1 | `meter^1.5 `kg^0.5 `sec^-1 |
MKSA 単位系の組立単位網全体をイメージとして思い浮かべられるられるのは `meter `kg `sec `ampere `volt のときに限られると、私は考えます。皆様は如何でしょうか。
上で MKSA 単位系は、MKS `ampere `volt 単位系だと書きました。一方で SI 単位系の規格書の単位の一覧表には、下のような `meter `kg `sec `ampere 四つの基本単位を使った単位次元表記が書かれています。この四つの基本単位だけによる組立単位の表記は素人向けの便法だと、私は考えます。皆様は如何考えますでしょうか。
組立量 | 名称 | 記号 | 他のSI 単位に よる表し方 | SI 基本単位に よる表し方 |
力 | ニュートン | N | m kg s.2 | |
圧力,応力 | パスカル | Pa | N/m^2 | m^-1 kg s^-2 |
エネルギー 熱量 | ジュール | J | N m | m^2 kg s^-2 |
仕事率,放射束 | ワット | W | J/s | m^2 kg s^-3 |
電荷,電気量 | クーロン | C | A s | A s |
磁界の強さ | ampere/meter | H | A/m | A m^-1 |
電位差 電圧 起電力 ボ | ルト | V | W/A | m2 kg s.3 A.1 |
静電容量 | ファラド | F | C/V | m^-2 kg^-1 s^4 A^2 |
電気抵抗 | オーム | Ω | V/A | m^2 kg s^-3 A^-2 |
コンダクタンス | ジーメンス S | A | /V m | ^-2 kg^-1 s^3 A^2 |
磁束 | ウェーバ | Wb | V s | m^2 kg s^-2 A^-1 |
磁束密度 | テスラ | T | Wb/m^2 | kg s^-2 A^-1 |
インダクタンス | ヘンリー | H | Wb/A | m^2 kg s^-2 A^-2 |
透磁率 | Wb/(A m^-1) | m^-3 kg^-1 s^3 A | ||
誘電率 | C/(V m^-1) | m^-3 kg^-1 s^4 A^2 | ||
MKSA 単位系が物理量の単位次元を MKS + `ampere 四つの基本単位の組合せで表現するのは、素人向けに単純化したいためだと、私は考えます。SI 規格書では `volt などを含んだ単位系で表示しても良いとしています。この文章の意味は「電磁気学を理解している専門家はは物理的意味を明示する `volt などを含んだ物理的意味を表現する単位系で表示すべき」であると私は解釈します。
SI 単位系の規格書は結果を纏めてあるだけで、説明しません。理由を書きません。SI 単位系の規格書が書かれた目的は、物理量の表現を全世界で共通にすることです。。その文書の中で、現行のように単位系を定めた理由や その理論的な背景をを説明していては SI 単位系の規格書が冗長になってしまいます。
そもそも SI 単位系の規格書を読むのは物理学者だけではありません。その規格書を読む方達のうち Mawxwell 方程式を理解している方は一割もいないでしょう。そのような規格書の中で `meter `gram `sec ではなく `meter `kg `sec を採用した理由を説明しても、大多数の読者には混乱を与えるだけでしょう。ましてや磁束:weber の単位を volt sec で表すか `meter^1.5 `kg^0.5 `sec^-1 で表すかなんて、大部分の SI 規格書の読者にとって、どちらでも構わない問題でしょう。
MKSA 単位系を MKS `ampere `volt 単位系と考え直してみても、コンデンサ容量は `coulomb/`volt と表すべきです。`ampere `sec/`volt でも物理的意味を表していますが、`coulomb/`volt に比較したら不自然です。でも `weber や `coulomb などの単位系を理解しておくべき技術者は限られます。ならば `coulomb `volt のような単位次元表記は SI 単位系規格書の中でも限った場所で使うべきでしょう。全体を通しての表記としては `meter `kg `sec `ampere の四つにしておくほうが SI 規格書を誰にでも読めるものとできます。
知っておくべき単位の種類を最小にしようとしたとき、物理量の単位次元表示のしかたは MKS + `ampere 四つの基本単位の組合せ表記になります。MKSA の四つがあれば全ての物理量の単位次元を重複無しに表記できます。MKSA を使えば抵抗の単位次元表記を `meter `kg `sec^-3 `ampere^-1 にできます。これでは `volt/`ampere のような物理的意味を表せていませんが、抵抗の単位次元を MKS だけで表したときの `meter/`sec (これは速度の単位次元でもあります) のように重複はしません。重複しなければ、MKSA 単位次元表記は物理量の次元解析には使えます。この意味で大部分の SI 単位系表示は MKSA で表記しておけば、単位系としての最低限の機能は果せます。なんせ重複がないのですから。
SI 単位系の策定者たちは「できるだけ多くのユーザーに SI 単位系を使ってもらうために、単純な MKSA 四つの基本単位を使った単位次元表記も一覧表に載せておこう。抵抗の単位次元であっても `meter `kg `sec^-3 `ampere^-1 と表しておけば、四つの基本単位を覚えるだけで済む。物理的意味を理解している専門家ならば、抵抗の単位次元は勝手に `ohm や `volt/`ampere で表記するだろう。」と考えたと私は思っています。その証拠に、電磁量ではないニュートン力学の圧力量でも `newton/`meter^2 の単位次元表記と `meter^-1 `kg `sec^-2 の二つを SI 単位系は同居させているのですから、電磁量でも 圧力Pa と似たことを大規模に行っているだけでしょう。
でも私は長い間 SI 単位系の規格書を このように大胆に読み直せませんでした。 `meter `kg `sec^-3 `ampere^-1 の単位次元表記を見せられとき、抵抗であることを直感的に解らない自分が悪いと思っていました。MKS `ampere `volt 単位系であることが解っておらず、その結果として電磁量の体系網をイメージできていないので、`meter `kg `sec^-3 `ampere^-1 の単位次元表記が素人向けであるとは読み取れませんでした。
このような誤解は私だけではないでしょう。皆様は如何でしょうか。
以上のように、電圧も電流と同様な基本単位とすることで、電場側の組立単位、磁場側の組立単位、両者の間に入り込んでくる組立単位の物理量の道筋が、力学量でのときのように明晰に見えてきます。その物理量と単位系の導き方は、常に下流側に流れていきます。常に単純な線形関係で繋がっていきます。0.5べき乗は最初の電流基本単位の absolute な導出のときに出てくるだけです。
MKSA 単位系は、合理的な emu 単位系に Practical Unit System からの捻りを加えた単位系です。emu 単位系の理解から始めたほうが、容易に MKSA 単位系全体を見渡せます。`volt も電流と同様な基本単位であることが明確になります。
このような意味で MKSA 単位系は MKS `ampere `volt 単位系です。MKSA 単位系の言葉に引っ張られて `meter `kg `sec `ampere の単位次元で表しても、その物理的意味は明確になりません。それは `meter `kg `sec `newton^0.5 で表しているにすぎません。emu 単位系の `cm `gram `sec で表したときは大差ありません。それでは電磁量を理解・体得することは無理です。`meter `kg `sec `ampere `volt 単位系と考えることで、電磁量全体を基本単位から組立単位の全ての道筋を明晰なイメージとして掴めるようになります。MKSA の呪縛に囚われ無駄に時間を浪費する、昔の私のような学習者が減ることを望んでいます。